終りなき夜に生れつくを読んで
本作は夜の底は柔らかな幻のスピンオフ作品になっています。4編の短編集となっており、すべて夜の底は柔らかな幻よりも過去のお話です。
本作単体でも楽しめると思いますが、やはり前作を読まれていた方が面白いと思います。
各編の概要は以下の通りです。
夜の砂
夜の底は柔らかな幻の主人公有元実邦の協力者、須藤みつきと軍勇司がアフリカ某国で医療団として活動していた頃の話。
同じチームで今後のスピンオフ展開もあるかも?
夜のふたつの貌
医学部時代の軍勇司と、同大学に通っていた葛城晃の話。大学一年生の話なので、学部生・院生ともう5つ短編がつくれそう。
夜間飛行
葛城晃が入国管理官にスカウトされたときの話。
本編よりもいくぶんか人間味のある人物として葛城晃は描かれています。どのような経験を経て本編の性格になったのか気になりますね。
終りなき夜に生れつく
フリー記者の岩切和男が在色者関連事件を追う話。世にも奇妙な物語感がありました。
常々、恩田陸氏の作品に関して思っているのですが、この方は長編になると終盤息切れしてしまうことが多いのですが、短編や長編群像劇であればスタミナ切れすることなく走りきってくれる印象があります。
(長編であっても起承部分は素晴らしいです。とても引き込まれます。)
本作も上記に漏れず4編ともにきれいにまとまっており、また今後同様のスピンオフも狙っているのではないかという印象を受けました。今後の展開があるかどうか、すべては売上次第ですね。